Case 03
The House in Kourigaoka
道から玄関までは、コンクリートの板が飛び石のように並べられ、その間に黒い砕石が敷かれている。まっすぐ歩かせず、一枚ずつ足を置かせる。玄関はその先に引っ込んでいて、通りからは直接見えない。訪れる人がこの家に入るまでの数歩に、意識的な時間が挿し込まれている。
通りに向いた壁には、高い位置に横長の窓が一本だけ通されている。夜になると、そこだけが暖かく灯る。深い軒の裏に仕込まれた照明が壁の表情を照らし、それ以外は暗いままに残される。外に対して情報を出しすぎない構えである。
中に入ると印象が変わる。壁は白く、床は温かみのある木である。閉じた外観から明るい内部へ。この落差が、この家の入り方をつくっている。
居間の上は吹き抜けで、その最も高いところに窓がある。隣家の視線が届かない高さから光を入れ、白い壁で反射させて下まで届かせる。壁面には間接照明も回されており、昼も夜も、光は天井からではなく壁から返ってくる。壁を白く塗ることが、単なる色の選択ではなく採光計画の一部になっている。
吹き抜けに面して、二階には回廊が渡されている。手すりは細い鉄に木の笠木。階下の居間と上階の廊下が、視線でつながっている。二階建ての住宅でありながら、上下が別々の世界にならない。
階段は黒い鉄板から木の踏板を持ち出した形で、蹴込みがない。段板の隙間から光と視線が抜けるため、居間のなかに置いても空間を分断しない。階段の下はそのまま本棚として使われている。構造物を家具として読み替える、無理のない使い方である。
玄関脇には縦長の窓が切られ、その向こうに楓が一本植えられている。夜は足元から照らされる。扉を開けて最初に目に入るのが、この木になる。
居間と隣室の境は、天井までの白い引戸である。開けばひと続き、閉じれば別々の部屋になる。家族の人数や時間帯に合わせて、暮らし方ではなく間取りのほうが動く。長く住む家において、この可変性は静かに効いてくる。
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