CRESTIA

Case 01

南町の家

The House in Minamimachi

DESIGN NOTES

通りに面した壁には、窓がほとんど設けられていない。淡い灰の箱が濃いチャコールの基壇に載る、それだけの構成である。両隣が迫る住宅地において、外に向かって開くという選択は、そのまま隣家との視線の交換を引き受けることを意味する。この家はそれを引き受けない代わりに、光と眺めを別の場所から確保する道を選んでいる。

その答えが中庭である。家の中央を四角く抜き、そこに外部をつくった。敷地の外周に窓を並べるのではなく、敷地の内側に自分たちの外を用意する。日本の住宅地で採光とプライバシーを両立させる方法として古くからあるやり方だが、この家では中庭が単なる採光装置に留まっていない。

中庭には楓が一本だけ植えられている。台所に立っても、居間に座っても、食卓についても、視線の先にあるのはこの木である。隣家の外壁でも電柱でもなく、自分たちで選んだ一本の木を家の中心に置く。眺めを敷地の外に求めなかった以上、内側に用意する景色の質がそのまま暮らしの質になる。

中庭は部屋と部屋を隔てるだけでなく、つないでもいる。キッチンに立つと、ガラス越しに中庭を挟んで向かいの居間が見える。壁で仕切れば視線はそこで止まるが、外部を一枚挟むと、かえって遠くまで届く。距離を取ることで近くなるという逆説が、この平面には組み込まれている。

天井の高さは場所ごとに変えられている。居間は吹き抜けとして上から光を落とし、台所と食卓の上だけは濃色の天井を一段下げ、その縁に間接照明を回した。同じひと続きの床の上に、天井の高い場所と低い場所がつくられる。人は天井が下がったところで自然と落ち着き、上がったところで解放される。壁を立てずに居場所を分ける、確実な方法である。

テレビを掛けた壁には石目調のタイルが張られ、上から光が落とされている。照明が照らしているのは部屋ではなく、壁の表情そのものだ。夜、部屋全体を均一に明るくするのではなく、見せたい面だけを浮かび上がらせる。

この家で最も特徴的なのは、食堂の一面を占める白い引戸の壁だろう。閉じれば何もない一枚の面だが、開けると、片側には天井までの棚が、もう片側には机と飾り棚が現れる。しまうための収納というより、必要なときだけ出てくる部屋と言ったほうが近い。生活に必要な道具を視界から外しながら、使うときには一歩で届く場所に置いている。

トイレは細長い平面をそのまま活かし、壁を天井まで通した。途中で見切らないことで縦の伸びが強調され、家の中で最も静かな場所になっている。

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Case 02

荻野西の家